ヴェネトの白ワインを代表するソアーヴェSoave。機会あり老舗カンティーナを訪れた。
ここは、そのカンティーナの持つ、ブドウ畑。モンテフォルテ・ダッルポーネMonteforte d’Alponeという地名の場所。
一望する丘陵地の斜面に広がるブドウの木。ソアーヴェの主要品種、ガルガーネガらしい並びとその生育法。

穏やかな斜面の広がる地形に生まれるべくしてできたブドウ畑の景色は、その美しさがイコールで結ばれる特異な景観。この地形ならではの気候で高品質なソアーヴェができあがる。同地と他ソアーヴェの地で造られるワインのみが『Soave Classico』と呼ばれるには、自然の力で造り出された地形とそれに伴う気候が与える賜物。平野部に育つブドウからは『Soave D.O.C.』とは名づけられても『クラッシコClassico』とは決して呼ぶことはできないから。
丘陵地の上部に見える地域と盆地のようにくぼんだ部分で採れるブドウの性質も、微妙に変わる。そして興味深いのは、同カンティーナの所有するブドウの木の樹齢。上部は平均80年。7-8年くらいの若樹からできるブドウとは収穫量では1/3以下と、もちろん劣るものの、同カンティーナの求めるヴィーノには、これらの熟した樹が必要で必須。
丘陵地の中腹に見えるまばらな部分は、900年代にヨーロッパ全土を襲ったブドウの害虫被害にもめげずに生き残った者たち。樹齢100-120年のブドウは、さらに奥深い味わいを持つ。
イタリア人にとっても、一般的には白ワインには熟成させない若いものを好む傾向があるが、この趣あるソアーヴェは、やはり少し年を追うことで、品の良さとバランスが生まれてくるもの。
この中腹に見えるクネクネとした細い農道、こういう類の道を“コントラーダContrada”と言うが、同カンティーナにて、この部分で造られるワインの商品名『コントラーダ・サルヴァレンツァContrada Salvarenza』が、正式なこの道の名称。
その昔、レンツァという名の少女が、山賊に追われて逃げていた夜、途中の一軒の騎士の家にて助けられた。その後はもちろん恋に落ち…という伝説の残る道。現在は“少女レンツァが命を助けられた(サルヴァータsalvata)道”という名が今でも名称として残り、騎士の家もこの道沿いに残る。中腹にポツンと見える小屋がそれだ。

そして、これが同カンティーナの主要商品のソアーヴェ・クラッシッコ。収穫されるブドウの場所、樹齢によって3種の異なるソアーヴェを醸造している。

飲みなれたいわゆる“ソアーヴェ”とはまた違う新たな発見のあった訪カンティーナのできた一日に、この日案内してくださったオーナー兄弟、そして良き機会を与えていただいたことに感謝。
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ヴェネツィアの土地料理にカッソピーパというものがある。正確には、ヴェネツィアの、というより、ヴェネツィア本島ラグーナ沿いの南に位置するキオッジャの料理だ。
キオッジャは、アドリア海沿岸屈指の漁港の街。市民向けの魚市場が毎朝たち、別地には業者向けの卸市場も存在する。

街はヴェネツィアのような風景がありながら、漁港の街ならではの喧騒的なムード。街行く人々もなんとなく騒々しい感もするが、これまた独特の風景。話す言葉もヴェネツィアの訛りとはさらに違ったものすごい訛りがある。キオッジャの人のことを“キオジョット”と呼び、また別の人格が存在する、というわけだ。

そして、料理も然り。クチーナ・キオジョッタの代表格。
さて、同料理は、タマネギの産地としても有名なキオッジャのタマネギをたっぷりと入れた貝の煮込みのことをいう。
キオッジャの市場には貝専門業者もあって、貝をたっぷり使うヴェネツィアの土地料理も垣間見れるところ。


さて、料理名の”カッソ”とは、この料理に使うテラコッタの長時間用の煮込み鍋のことを指すキオッジャの言葉。この鍋のなかに獲れたての魚介をぶちこんで弱火にかけて仕上げる。この際に鍋から湯気がパイプの煙を燻らすような状態を保つのが必須。この煙の立ち方をピパーレ(=パイプの煙を燻らすこと)ということから、同料理名がある。
使われるのは、ラグーナで獲れる貝類、ボンゴレ(アサリ)、コッツェ(ムール)、ガルツォリ(巻き貝みたいな)、カッパ・ルンガ(マテ貝)等々。市場で手に入る貝を何でも使うことができるのだが、種類が多ければ多いほど美味しくなる。
調理開始時は貝の持つ水分が鍋にいっぱいだが、蓋をあけたままピパーレするように火を入れ、最終的には貝の旨みが凝縮したようなスープになる。
味の決め手は、ヴェネツィアならではのスパイスをたっぷりと聞かせて、クローブ、シナモン、ナツメグ、ローリエ、タイム等々。

この日は、イカやタコも入っているので、全体的にはタコの色がついて赤く仕上がっている。つまりはこれは漁師の料理にて、獲れた魚介を鍋で煮込みっぱなしの料理なので、入れる素材に決まりは、もちろん、ない。
それにしても、新鮮な魚介をこんなに煮込んでしまって、南の人に見つかったら怒られそうな調理法だ…
通常、このままいただいてもよいのだが、カッソピーパのお決まりは、太いスパゲティ状の地元のパスタ、ビーゴリを合わせて。
ビゴリ・イン・カッソピーパBigoli in Cassopipa のできあがり。

※mihokoさん、moitza、写真をなくしてしまった私への温かいご協力、ありがとうございます。
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リクエストしたレッスン内容は“コテコテ”のフリウリ料理。
素朴でシンプルな内容と素材オンパレードの郷土料理をアグリの料理担当である女性シェフ、マルゲリータに教えを受ける。

まずは、フリーコ。詳しくは⇒
こちらそして、自然のエルバ(野草)をたっぷり混ぜ込んだフリッタータ。
使ったのは、メリッサ(レモンバーム)、バジリコ、フィノキエット、ローズマリーノ、エルバ・チポリーナ、そしてシレーナ(シラタマソウ)。地元ではスクロピットと呼ばれるものだ。

すべてを合わせて刻んで、卵に混ぜ込んで両面を焼き上げる。

プリモ・ピアットには、地元のパスタ、キアルソンスcjarsons。いわゆるラビオリなのだが、中の詰め物が甘いものが入る。
これも各家庭にオリジナルなリチェッタがあるそうなのだが、彼女のリチェッタによると、茹でたジャガイモ、にタマネギ、干ブドウ、シナモン、そしてミントと砂糖が入る。

半月状に成型し、茹でてバターで絡めて仕上がりに燻製リコッタを散らしていただく。器にしているのは、ジャガイモの入っていない、フリーコ。


そして、オルゾ(大麦)とファジョーリと野菜たっぷりのズッパ。こういうの、だ~い好き。

自家製の太いサラミをしっかり炒めたたっぷりのタマネギとアチェトでの軽い煮込み。
これは完全に冬場の料理で、冬らしいしっかりとした仕上がりなのはもちろんだが、冬季のまだ生っぽくて柔らかくジューシー、ムッチムチな状態のサラミがこの料理に向く。


ドルチェはこの旅で何度も目にした、グバーナgubana。
発酵させた生地に干ブドウやクルミ、松の実、アーモンドなどをたっぷりと合わせたものを巻き込んで焼く。非常にリッチにて、食後よりも朝食にちょうどよい感じ。


いくつか味見をしたけれど、これはマルゲリータの自然酵母でつくったこのグバーナが最高に美味しかった。
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ファガーニャという地でつくられるフォルマッジョ。ラッテリアと通称されるもので、今回訪れた先のチーズ製造所は1923年創業にて、当時からの伝統製法を守り続けている。
このフォルマッジョの一番の特徴は、生乳から直接製造に入る工程だ。

生産過程には最初の高温殺菌の工程をせずに、そのままフォルマッジョ作りに入る。大きな銅鍋でゆっくりと加熱。凝固材を加えてしばらく置き、塊ができ始めたら均一に切る。


さらに熱を加えて温め、時間と温度と状態を目と手の触感にて型づめ。

大きなカゴにできたてホヤホヤを詰めておおまかな成型と、水抜き。



時間を見計らい、布に包んで、今度は縁のみの型にはめてさらに水抜き。何度か上と下をひっくり返す。

その後、内側にFagangaの文字とマークのついた型に入れて、フォルマッジョの縁に文字を入れる。もちろんここには日付も入っている。


ここで最後の形づくりとして端をナイフで切り落としながら大きさを同一にするために出てきた端切れは、土地の料理、フリーコに使われるもの。
翌日にはこれが塩水のプールにてしばらく置かれ、そして熟成。


食べ時は30日以降。熟成度により、60日、90日…とそれぞれの旨さの価値がある。

次々と訪れる地元の人たちの客足も絶えることなく、地元に超密着したカゼイフィーチョだった。
私も自宅用に、と数種買い求めたが、パドヴァに戻ってから訪れたフリウラーノの知人にお土産にしたら、大感激のうちに喜ばれた。やはり、土地のものを食べて故郷を強く感じるのは、皆一緒。
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フリウリの地にて出会ったもののひとつ。パン・ディ・ソルク。
ソルクとはマイス(トウモロコシの粉)のこの地方独特の言い方。つまりはマイスを使用したパン、ということ。
そして、さらには、ソバ粉、小麦粉、乾燥イチジク、干ブドウ、フェンネルの種などなど、多種の素材を混ぜ込んでつくりあげる。
全体的にずっしり、そして甘いパンとなるのだが、この土地はその昔、ハプスブルク家の領地であったことから、オーストリア風にパンドルチェとして確立しているものだとか。
そして、もともとは、このリッチなパン(パンドルチェ)は、ナターレの際、もしくはお祝い事の際などに食べられていたもので、各家庭にそれぞれのリチェッタが存在したという。

形は丸くて周囲の皮の部分は薄く、パンの内部自体は、モロモロとした感じに仕上がっている。
パン自体は甘めではあるが、お伴となる食事には、土地特有のサラミ、クラウト(キャベツの酢漬け)、ポルペッティ(土地のものは豚のレバーが入るそうだ)など塩気のものにもよく合う。日が経ってしまったパンは、牛乳に浸したりて食べたり、ズッパの上にボソボソのパンをのせて混ぜ込んで食べたりもする。
大きな特徴となり、粉の割合の多くを占めるマイスは、チンクアンティーニcinquantiniと呼ばれる種のマイスが土着品種。チンクアンティーニ(=50くらい)と呼ばれるが如く、50日で栽培ができるトウモロコシとして知られているもの。
現在は、このパンもスローフードに認定されているもので、トラディショナルな材料と製法、そして木の焼き窯でつくられている。
この日に訪れた際には、1個だけが残っていたのでそれを頂いたのだが、週に2-3回、それも全て予約生産なのだとか。

こちら、お店の看板。店の中はここで焼かれる(普通の)パンや焼き菓子などとともにオーガニック食材が並び、自然派愛好家たちが訪れる小さな店のようだ。
そしてそして、このあとに訪れた先がトウモロコシの製粉所。
いわゆるモリーノmolinoと言われる、川の水流を利用した粉ひき場がこの土地にあったものを30年代に私たちが訪れた現在の位置に建てられたもの。
何世代と時代を経るにつれて、残念ながら昔の面影が当時の建物の半分以下になってしまっているのだが、現在このモリーノを守っているご主人はそれでも挽く粉(トウモロコシの粉)や挽き方にこだわって、残された一部のモリーノを将来も継続していくべくしている。



周囲は見渡すばかりのトウモロコシ畑。ヴェネトの風景もそうだが、ヴェネトはほぼ平野にてまっ平らな土地に広大に続くトウモロコシ畑、というのとは違い、段々畑的にトウモロコシ畑が広がっている景色はこれまた見応えのあるものだった。
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