パドヴァのとっておき。

北イタリア・ヴェネト州パドヴァより、料理や季節のおいしい情報を中心に、日々のできごとを綴ります。



100年続くバッカラ専門店 Ristorante Vaccese :: 2016/02/29(Mon)

バッカラ(baccalà)は、ヴェネトを代表する食べ物で、ヴェネト州内にも、各地域により様々な郷土料理が存在する。

バッカラとは、大型のタラ(メルルーサ)を干したもの。本当は、魚を三枚におろしてから塩漬けにしたものをさすのだが、ヴェネトでは、一般的にバッカラと呼ばれるそれは、魚の内臓をとり、ガッチガッチになるまで干したもの。ノコギリを使わないと切れないくらいの硬さになる。これは、正しくはストッカフィッソと呼ばれるもの。

もちろん、レシピ本には、本来のバッカラと区別するためにストッカフィッソと表示されるのだが、一般的にここら辺では、バッカラ=ストッカフィッソとして認識される場合が多い。

その、バッカラ(あえて、バッカラと呼ぶ)の最も有名な料理としては、主にヴェネツィアが主流の『バッカラ・マンテカート』、ヴィツェンツァで主流の『バッカラ・アッラ・ヴィツェンティーナ』が挙げられる。

前者は、戻して茹でたバッカラをほぐして、そこにオイルを少しづつ加えながら激しく攪拌することにより、ペーストのような仕上がりにしていくこと。タラの繊維質の多い肉質の特性を生かしたもの。

後者は、戻したバッカラを牛乳、オイル、玉ねぎ、アンチョビ(入れない場合もある)、パルミジャーノを重ねて鍋に入れ、それを数時間かけて煮込むもの。

この料理は、『アッラ・ヴィツェンティーナ(ヴィツェンツァ風)』と呼ばれる通り、ヴィツェンツァ周辺が発祥の料理だが、ヴィツェンツァ近郊のサンドリーゴという町は特に同料理に関しては特別な土地として、この料理の”お墨付き”のついた特定レストランの協会までもが発足する。

このマークが目印。

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サンドリーゴ周辺には、土地の有名店が、イコールバッカラ専門店となり得る傾向になるほどだ。いかに、この土地の名を冠したこの料理が地元密着度の非常に濃い一皿だ、ということが解る。つまりは、それだけ、地元の人に愛され、大切にされているもの、ということだ。

前置きが非常に長くなったが、パドヴァ郊外で、ここでも100年以上の歴史を誇る、バッカラの専門店がある。
パドヴァ郊外の町、ヴィツェンツァ方向にあるサッコロンゴという町のレストラン、リストランテ・ヴァッチェーゼ(Ristorante Vaccese)。

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今年、105年を迎える、家族経営のこじんまりしたレストラン。素朴な造りに店内もクラッシックな雰囲気だが、地元人に愛され続ける店。

ご主人のレンツォさん。

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この日に私たちが注文したものは、バッカラのビーゴリ。

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バッカラ3種盛り。内容は、バッカラ・マンテカート、バッカラのインサラータ(茹でたバッカラをオイルと塩、コショウで和えたもの)、そして、バッカラ・マンテカート。

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これらのメニューは、ヴェネトにいると、非常に頻度高く食べる機会のあるもので、目新しさはそれほどないのだが、これを目当てに通う馴染みが多くいる。

なんだかほんのりと温かいのは皿の上の料理だけではなく、店全体が、そしてこの空間に居る他のお客さん達全てに漂っているような気がした。

Ristorante Trattoria Vaccese
Via Roma 98, Saccolongo 35030, Padova
info@trattoriavaccese.it





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マロスティカ :: 2016/02/20(Sat)

ヴィツェンツァ県の北部の町、マロスティカ。人口約14000人弱の背後にアジアーゴを控えた丘陵地帯の麓にある小さな町だ。

この町を有名にしているのは、春先に採れる美味しいさくらんぼ。産地呼称であるIGPの認証も受けている。そして、2年に一度開かれる人間チェスのイベント。町の中心にある広場は、それがチェスの碁盤になっているのが町を象徴するシンボルであり、偶数年には、この広場がそのままイベントの舞台となり、中世の衣装をつけた役者たちによる大掛かりなチェス大会となる。

その広場の名も、スカッキ広場(Piazza degli scacchi)。その広場の前にそびえるお城が、カステッロ・インフェリオーレ(Castello inferiore)。

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広場の片隅には、チェスの駒がおいてあり、「市民も観光客も自由に遊んでくださいね」と、されているのも微笑ましい。

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さて、この城、インフェリオーレ(下の)というくらいなので、それに対する上にあるカステッロがもちろんある。

広場から街を見下ろすようにある小高い小山の上にそれがある。車でももちろんいけるのだが、街の真ん中からその山の頂上にそびえ立つ城まで歩いていくことができる。

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ちょっとした山登り…

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けっこうな急な山道のようであるが、時折見下ろす街の景観がだんだんと遠くなってきて、ついさっきまで居た下の城とその前のスカッキ広場の全容が見えてくるようになる。なかなかといい景色だ。

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がんばって、上まで到達。カステッロ・スーペリオーレ(Castello superiore)。現在は一部がレストランになっている。

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一部はまだ昔の城の壁が残っていて、街を遠くまで一望でき、大きく広がる平原と、遠くに見える山岳地帯の全景が見渡せる。

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そして、この高い場所にある城を頂きとして街を囲むように急勾配に造られた城の壁。

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小さくて静かな街だが、なかなかと趣のあるいい風景の街、マロスティカ。

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  1. Veneto/ヴェネト州
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春近し?! ヴェネツィアの農業の島 サンテラズモ島 :: 2016/02/15(Mon)

久しぶりにヴェネツィアの離島、サンテラズモ島へ。数年前から何かと(無理やり)お世話になっている一家のもとを訪問。

図々しくも押しかけるのだが、いつも暖かく変わらない態度で接してくれる3世帯一家。我が娘と同い年の男の子の成長も、我が子のように微笑ましく。この日は娘と一緒にくるものだと思って待ち構えていたこの子、私が一人で歩いて近ずいてきたのを見て、ひじょーに残念な声をあげた…ごめんー。

とはいうものの、いつものように、彼らの物置に転がっている(失礼な言い方だが、ほんとにそんな感じ)自転車を借りて、島巡り。この日は、8歳になったこの男、ルーベンヌくんの先導により、あっちに寄り道こっちに寄り道しながらの島旅となった。

目指す目的は、彼らの所有するカルチョッフィ(アーティチョーク)の畑。この島は、カルチョッフィの若いつぼみを成長する前に刈り取る、カステラウーラと呼ばれる名産品のメッカだ。

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近頃の市場をみると、小さければカステラウーラという名を冠してこの時期もうすでに売られているのだが、ここら辺のホンモノは、ここ、サンテラズモ島のもの。季節はもう少し先、4月に入ってからであるので、今のシーズンのものは、値段をつけるためだけのもの、と頑固に思っている。
実際、それらを売る八百屋だって、平気で「ヴェネツィアの…」という輩までいるのだから。

今の畑はまだ株の高さも低くて、根の周辺には、寒さから守るために盛られた土がこんもりとしている。しばらくすると春の気候をより感じさせるために、畑の土をならして、収穫準備に入る。

植物は正直だから、気候を素早く素直にキャッチし、自分のつけるべき実を太らせ熟させるために、どんどんと栄養を吸収して、どんどんと成長する。私たちはその自然の恵みのおすそ分けを有り難く頂戴する、というわけだ。

彼らはこのカルチョッフィの畑以外にも、ヴェネツィア本島の人々、レストランに卸すための季節の野菜を生産する。
この時期は、春の種植え、苗植えにむけて、少し静かな時期。少しずつ少しずつ土を準備し、順々に作業を進めていく。

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この日は、ピゼッリ(グリンピース)の種植えの作業中。島ならでは特有のミネラル分たっぷりの土の栄養を吸収して、美味しいピゼッリの収穫を迎えるのが今から楽しみ。

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小さな島だが、島内にて土の状態が異なり、砂地で塩分の強い土地と、泥池でしっかりと根付く野菜が適した土地とが点在している。この土の状態を見ながら、植苗・植種を計画する。

それにしても、特異な地形。ラグーナに浮かぶ島に並ぶカルチョッフィ、ぶどうの木…ここでしか見られない光景。

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そして、彼らの暮らしもとってもシンプル。ここはどこにいるんだっけ…?と一瞬自分がどこにいるのかわからなくなる錯覚さえ覚える。

彼らに分かれを告げてヴェネツィアに戻り、また観光客いっぱいの狭い路地を歩き始めると途端に現実に戻ったりする…

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ジュセッペ・クインタレッリ Azienda Agricola Giuseppe Quintarelli :: 2016/02/12(Fri)

数年前に初めて訪れてから、現在まで数回再訪している同カンティーナ。ヴェネトを代表する赤ワイン、ヴァルポリチェッラとアマローネの超代表格カンティーナである。

ぶどうを収穫してから数ヶ月間影干しにし、果実の糖度を高めてからワイン製造に入り、大きな木樽にて数年間の熟成を経て、一本のアマローネが完成する。この製法はこの土地に長らく根付いたものであるが、これをアマローネとして製法自体を、そしてアマローネを世間に知られる高級ワインとしてその価値を確立したのが、『アマローネの父』と称される、今は亡き、ジュセッペ・クインタレッリ氏。
現在は彼のお孫さんであるフランチェスコさんが主導となって、ワイン造りが続けられている。

同カンティーナはヴェローナの町の北側、パレッタ山(Monte Paletta)の山麓に位置する。ネグラル(Negrar)と呼ばれる、ヴァルポリチェッラの一大有名地。

保持する畑は12ha。カンティーナ周辺にも畑が広がり、ヴェネトでよく見られるペルゴラ(Pergola Veronese)とグヨット(Guyot)の2種を用いて整木がなされている。比較的古い木と新しい木との違いでもわかる。

ここ数年、カンティーナは大改装工事がなされている最中だが、地下のカンティーナに降りると、おなじみの大きな大きな樽が整然と並ぶ。

同カンティーナのシンボルでもあるこの樽。

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そして、ジュセッペさんに授かった4人の娘さんを表現したもの。

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今回カンティーナを訪問して、とても感動的なのが、これからレチョトになるぶどうがまだアッパシメント(干して水分を抜き、糖分を凝縮する過程)の段階で広げられていたこと。

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アマローネ用のものは、この数日前に作業に入ったそうだが、レチョトには、この後数日後の作業を控え、まだ棚に乗せられていたもの。干している期間は4-5ヶ月間、その後醸造作業に入り、8-10年の歳月をかけて完成する、という貴重なものだ。

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この土地のこの赤ワインを作り上げる3大ブドウ品種、コルヴィーナ、コルヴィオーネ、ロンデッラと、それぞれ品種ごとに、細い竹の棚に広げて干される。圧巻な光景だ。

そして、フランチェスコさんにより、デグスタツィオーネ(試飲)をさせていただく。

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唯一の白ワインである”ビアンコ・セッコ(bianoco secco)”から、1年間熟成の”プリモ・フィオーレ(primo fiore)”を経て、”ヴァルポリチェッラ・クラッシコ(Valpolicella Classico Superiore)”へ、と。

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個人的には、このヴァルポリチェッラが非常に好み。ヴァルポリチェッラとして、感動を覚える一本。

そして、アマローネとは同製法をとられるものの、ぶどうが不出来と判断された年のいわゆるアマローネである、ジュセッペの愛称を冠した”ベッピ(Bepi)” 、そしていよいよ“アマローネ・クラッシコ(Amarone della Valpolicella Classico)” 。最後は “レチョト・クラッシコ(Recioto della Valpoliella Classico)”。

貫禄あるその香りは、口に入れた際に、そして後の香りも複雑かつ奥深し。そして、感動的。






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ヴィアノーネ・ナーノ・ヴェロネーゼ米 Riso Vialone Nano Veronese :: 2016/02/10(Wed)

ヴェネト州の南側は、パダーナ平原を有する雄大な平原地帯が広がる。ヴェローナ県南部、ロンバルディア州マントヴァ近郊付近との境界を有する地域は、広大な田園風景の広がる米作地帯として知られている。

イーゾラ・デッラ・スカーラ(Isola della Scala)を代表とする、この土地の銘柄が、ヴィアノーネナーノ種だ。
地域呼称である、I.G.P (Indicazione Geografica Protetta)の認証も受けるこの品種は、イタリア国内でも、その90%がこの地域内で生産される、非常に地域性の強い産物。

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この産地呼称の認証をうけるためには、様々な規定をクリアしていなければならないのだが、大きくわかりやすい特徴の最たるものが、この土地の清水。地中から自然に湧き出る湧き水を利用した水稲栽培にて、土地ならではの産物が生まれる。

ここは、この土地で何十軒もある米生産業者のなかで、最も有名といわれるFerron社。ここにも、澄んだ水の水源がある。年間を通じて水温は12℃ほど。自然の偉大なる恵み。

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そして、この土地の米つくりに必要なのは、鯉。鯉が放し飼いされており、水中に住み、稲に被害を与える害虫などを食べる。チョウザメも同様に飼われていて、鯉と同様な働きをする。
1シーズンが終わると魚はリゾットの具材になるそうだ。

さて、このFerron社では、昔ながら、1600年代から続く脱穀現場を見学者に解放している。直径7.5mにもなる水車の力を原動力とした作業小屋。

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こちらは木槌にての脱穀機。同社の即売所には、他には出回ることのない、この木槌脱穀の米を購入することができる。

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そして、見学の後は、同社のお抱えシェフによる、リゾットの試食件昼食。

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素敵な解放的なキッチンにて、3種のリゾットを食べさせてくれる。最初の2種は季節によって。この日は、赤カブのリゾットにゴルゴンゾーラのソースを添えたものと、

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かぼちゃのリゾット。仕上げにアマローネの濃縮したものを風味づけに。

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そうそう。リゾット用につくられた、フォークのようなスプーンのような…リゾットがとても食べやすい。

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そして、3種めは、この土地の名物リゾットであるリゾット・デッリゾラーナRisotto dell’Isolanaだ。いわゆる、イーゾラ風リゾット。土地の名をつけたリゾットだ。
子牛と豚のミンチ肉を野菜とローズマリーと一緒にしっかり炒めたものを具材とする。

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ここで大切なのは、米の調理方法。通常、リゾットは、米を炒めて熱いブロード(だし)を少しづつ加えて仕上げていく。しかし、ここでは、ブロードは、はじめに一気に加える。おまけに調理中は蓋を閉めたまま。日本の米を炊くような感覚だ。

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米に火が入った頃合いを見はかり、予め火の入っている具材を投入。火からおろしてバターとおろしたグラーナを加えて丁寧にマンテカート(攪拌)する。これで、仕上がり。

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この土地でのリゾットというと、このイーゾラ風リゾットでなくとも、全てがこの方法で米に火を入れていく。とても個性的だ。

その昔、米の作業場で作業員たちがお昼の準備に米を調理する際、作業に忙しく鍋の前で構っていることなどできずに、放っておいてもできるリゾットの方法をとったことから、この調理法があるという。

ヴィアノーネ・ナーノ種の特徴はアミロース度が低いこと。従ってクリーミーな仕上がりのリゾットができる。粘りが強め、ということだ。カルナローリ種のアミロースが24%であるとすると、ヴィアローネ・ナーノは21%。ちなみに日本米のコシヒカリでは、16%という。

ここヴェネトに住んで、以前からこの品種を贔屓にはしていたが、ここを訪れて、もはやすっかり贔屓というよりも虜に近くなった。
平原を広大に広がる田園に苗が植えられ、水が張られた時期に、必ず再訪したい。

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