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パドヴァのとっておき。

北イタリア・ヴェネト州パドヴァより、料理や季節のおいしい情報を中心に、日々のできごとを綴ります。



ヴィツェンツァの希少なブロッコリー「ブロッコロ・フィオラーロ (Broccolo Fiolaro) 」 :: 2019/01/20(Sun)

ヴィツェンツァの西側にクレアッツォ(Creazzo)という地区がある。平野から少し小高い丘陵地帯にて栽培される特殊なブロッコリがある。
フォラーロと呼ばれる所以は、その特徴ある生産物の姿から。

地面に沿うようにして成長する主株から、細い子株がいくつも出る。これをフィオーイ(fioi)、つまりはヴェネト弁でフィリオ(figlio=子供)のことをいう。細く数多く成長する
細長い葉が食用部分になるのだが、これがこのブロッコリーの個性。その特徴から名前がついている。

生育場所は、標高150-250mくらいの丘陵地帯のみが質のよいブロッコリーのできる地区。平野から少しあがった場所にて、空気がより静澄である場所。南向きの日当たりのよい丘陵地が生育に関与する。土壌は砂まじりの泥質だが、ミネラル分に富む。

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この土地だからこそのこの環境にて仕上がるこのブロッコリーの美味しさの特徴である、クロッカンテ(コリッとした)で甘みが出てくる。

収穫の最盛期はその年の気候にもよるが、11月後半から1月いっぱいくらいまで。土地に霜がおりるらいのしっかりと低温を感じることで、葉の緑がさらに濃く、表面がまるでキラキラと輝くように、そしてシャキッとした最高のものとなる。
野菜はその適正な環境におかれて成長すると、見た目もより美しく、そして味はそれに比例するかのように、その野菜らしさが一層増すものだ。

収穫は、専用の大きなハサミで茎をザクッと切り、作業場にて、細い子株を切り揃える。

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この日に訪れた農家は、27歳の若いアルベルトが中心となり、その友人のエドワードとでこのブロッコリの生産および販売を数年前から本格的に始めた農家だ。

本格的に…というのも、この野菜自体はこの土地に古くから存在していたもの。小さな農家の畑の片隅で自宅用に栽培されていたくらいのもので、農家の数が減少していくのと同時に、この貴重な農産物もどんどんと作付け面積が減少していった。
それをこの二人の若者が、再度復活させようと着手したもの。500株の栽培を始めたのが2014年のこと。5年後の現在は、それが17000株の栽培にまで増えている。
なんでもこの地区にて、このブロッコリーを栽培する農家はたったの約10軒ほど。こういう若者が先頭にたって、地元野菜を盛り上げていくのは、とても素敵なことだ。

彼らの売り先は、直接レストランなどへの販売が主なもの。野菜の特徴をよく理解し、好んで使ってくれる料理店などが主な消費元だ。

アルベルトの家はもともとの農家であるので、祖父母も含めての農作業。すごい元気なおばあちゃんがはりきって作業現場を見せてくれる。

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そして、家の中に案内されたら彼のお母さんがちょうどブロッコリーを茹でているところだった。旬の一番美味しい時期のものを茹でておいて冷凍にして保存するため。

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大きな鍋に塩を加えて沸騰したところにブロッコリを投入。茹ですぎには注意といわれ、再沸騰したところで湯からひきあげる。

子株の根元に近い芯の部分。ここが柔らかくて甘くて一番美味しいところ。

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それを細かく刻んでオイルをかけて試食させてくれた。

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甘みが口の中にわーっと広がって、ブロッコリーらしい青っぽさと茎のクロッカンテさとが非常によい。
茹でたものをペストにしてパスタと和えるなどしても美味しいのだとか。

またの再会を約束して、夕暮れが一望できるお宅を後にした。
素敵な出会いに感謝。




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パドヴァの希少な土着品種ブロッコリー :: 2019/01/13(Sun)

野菜ってほんとに面白い。北イタリアに住んでいるから、寒い冬にはより寒い土地ならではのものが面白いのかもしれない。

最近知り合った生産者に、パドヴァ土着品種ブロッコリーがあることを知り、農家を訪ねてみた。

生産地域はパドヴァ南部。ヴェネトには、いくつかの土地固有のブロッコリーが残っているが、これもそのひとつ。

「Cavolo Broccolo Padovano (カーヴォロ ブロッコリ パドヴァーノ)」=パドヴァ産ブロッコリ

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ブロッコリーは、キャベツと同じ仲間のアブラナ科だが、この品種は言うなれば、一般によく知られるブロッコリとキャベツの合いの子のような形をしている。要は、開いた葉を持つのが特徴。色も、寒い冬野菜特性の、非常に濃い緑色。だが、株の芯のほうにいくと柔らかく甘みが増す。

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生食にはあまりむかないが、しっかりと火を通していただくのが良い。

低い気温にも耐性のあるもので、霜が降りくらいの氷点下にも耐える。だから、収穫期も遅く、11月の後半から。

それなりに長くパドヴァに住んでいながら、この種のブロッコリーがあるのを今日まで知らずにいたが、市場への出回りは非常に少ない、超希少な野菜
その昔は、出荷の際には、バッサーノのアスパラのように、細い柳の若い枝でこの野菜をしばって出荷していたのだとか。

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同品種を保護し、普及に努める生産者団体が存在し、この種のブロッコリーの生産農家では、交配による種絶滅を防ぐため、各農家にて収穫・出荷のシーズンを終えても、取種用の株を残しておき、開花させて種を保存しているのだそう。畑へは種まきではなくて苗植えをしているので、地元内の苗屋に種を持ち込み、苗まで成長させたものを畑に植苗する。

この日訪れた生産者は、オーガニックの認証を受けており、パドヴァ卸市場にもオーガニック専門業者として、約50生産者とともに協同組合を立ち上げている。

畑では、南部パドヴァ特有のラディッキオもあり、現在、畑にまだ残るものと、軟白工程中のものがあった。

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この地域の軟白工程は、水に浸すのではなく、とにかく日差しから避けて、適度な湿度を与えること。黒いブニールシートの内部には、温度を保つたけに干しワラがかませてある。
この土地に150年以上の歴史を持つ農家の家系という、彼らの話いわく、昔は牛舎の片隅に畑での収穫後のラディッキオが積んであったのが日常だったのだという。牛舎は動物がいるおかげで、真冬でも適度な温度と湿度が自然と保たれていた環境だったから。

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聞いても聞いてもお宝みたいなおもしろ話がとびだし、聞けば聞くほど面白い。土地ならではの歴史背景が垣間見られるのが、土地固有の生産物なのだと思う。



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モンテ・グラッパのチーズ、モルラッコ :: 2019/01/10(Thu)

ヴェネト州、ヴィツェンツァ県の北東から始まる山脈のうちのひとつ、モンテ・グラッパ。西側をアジアーゴ高原とつながり、ここは、第一次世界大戦の際に戦場になった場所として、厳しい冬場をここで乗り越えた山岳隊について語られることが多い場所でもある。

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この山で、希少なチーズを生産するマルガがある。「マルガ・ガスパリン(Malga Gasparin)」。標高約1300mに位置し、春先以降は彼らの所有する乳牛が放牧され、毎朝早くからチーズの生産が行われる。冬場には、生産回数はグンと減り、主な製品は熟成タイプのものとなる。

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その代表となるのが、「モルラッコ(Morlacco)」。地元の人には「モルラック(Morlach)」と呼ばれる。このチーズの起源としては、パストーリ(牛飼い)がもともとバルカン半島のモルラッキアから移動してきた民族であったこと。彼らがこの地で特有のチーズを作り始めたこと、からくる。

そして、このチーズはスローフードに指定されているものでもある。モルラッコと呼んでいるチーズには、一般的には数種の乳牛の乳を使用するのだが、このなかでも特別に扱われるのが、「ブルリーネ(Burline)」と呼ばれる品種のみから絞られる乳を使うもの。「モルラッコ・デッラ・ブルリーナ(Morlacco della Brurila)」とされるのが、この特別品だ。

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写真は、ブルリーナ種のみでつくられたチーズ。モルラッコはこの日、同行人が購入したものが最後のひとかけで、写真をとれず終いだが…

このマルガでは、2人の兄弟が中心となり、チーズの生産を行っているが、このブルリナ種を約50頭飼育する。この牛を所有するマルガというのは、非常に数少ないうちのひとつという。品種が少なくなってきている理由としては、乳の量が少ないことから。

他には、この土地特産の、「バスタルド(Bastard)」やら、リコッタ、燻製のリコッタ、そしてサラミなどを販売している。

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小さな小さなマルガで、夏場は見渡す限りの草原で牛が放され、さぞかしいい風景だろうと想像するが、冬はここは非常に寒さの厳しい場所。積雪もあるし、氷点下に下がることもしばしばなので、路面は凍結している。

夏のいい時期に必ずまた来たい!



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エピファニアの行事「ブーサ・エ・ラ・ヴェーチャ(Busa e la vecia)」 :: 2019/01/07(Mon)

カトリックの暦上、12月8日から始めるナターレ(クリスマス)は年があけた1月6日にて幕を閉じる。
この日は、「エピファニア(Epifania)=公現祭」呼ばれ、パレスチナのベツレヘムに降誕したイエス参りをしたマーギ(東方三博士)の行いを祝うもの。

この日をもって、全てのナターレの行事が終了するのだが、この1月6日を迎えるよるには、マーギ同様にイエスに礼拝をしたかったが叶わなかった老婆(ベファーナ)が子供のいる糧をまわって甘いお菓子を靴下に入れていく、という習慣が残っている。

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マーギに道案内を頼まれたベファーナは、その際に彼らに正しい案内をしなかったのだが、それを悔やみ、後を追って自らもイエス参りをしよう、と思ったときにはもう時遅し。止むを得ずに自分でイエスを探さなければならなくなったことため、新生児のいる家庭を一軒一軒まわり、どのうちの誰かがイエスであることを願って、甘いお菓子を配った、という逸話から残る習慣だ。

こんなことから、ひと昔前まえでは、子供たちが枕元に靴下を置くのはこの1月6日の朝に向けて。このベファーナが各家庭の暖炉から家のなかに降りてきて贈り物を置いていく、と信じられていた。12月25日にサンタクロースが子供たちにプレゼントをもってくるのは、ごく近年の話だ。

知人のシニョーラも、エピファニアの前夜には、翌朝にこの老婆がプレゼントを運んでくることを大いに期待し、自分の食べていた夕食の皿を半分残して、暖炉近くに置いて寝床に入ったという。寒い夜空に飛び回るベファーナが、自分の家にも忘れずにきてくれることを願って。
翌朝はもちろん彼女のお母さんがその皿を片付け、その代わりに贈り物を用意しておいてくれる。

現在でも、子供たちは甘いお菓子がこの日の朝に枕元に置かれる習慣は残っているが、良い子にしていた子供には、甘い菓子が、悪い子には炭が置かれる、といわれているので、朝目覚めた子供はドキドキしながら靴下の中身を確認することとなる。

街中の露店でも、ナターレ時期にはお菓子を売る店が出てくるが、このベファーナに向けて、老婆の姿をした人形がこの時期はあちこちで見られる。

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そして、この日には、ヴェネト州に残る習慣で大きな薪「ファロー(Falò)」を燃やす行事が各地で行われる。パドヴァでは、旧市街地の南端となる広場、プラート・デッラ・ヴァッレにてこの大きな薪が設置される。薪の先端には、ベファーナがつけられるのが恒例で、「Brusa la Vecia (ブルーサ・ラ・ヴェーチャ)」と呼ばれ、親しまれる行事だ。

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「ブルーサ」とは、「ブルチャ(燃える)」のヴェネト弁、「ラ・ヴェーチャ」とは、「ラ・ヴェッキア(老婆)」の同じくヴェネト弁。つまりは、「老婆燃やし」という意味で、この老婆はベファーナにあたる。
意味合いとしては少々恐ろしい感じだが、この行事の意味するところは、この薪を燃やして出る煙の方向でその年の幸運を予測する、というもの。そして、この日のために一晩じゅう働いたベファーナをねぎらう意味もある。

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広場での点火は夕方6時とされていたので、午後から少しずつ人出がある。広場ではエピファニアにちなんだイベントが開催されている。寒い時期のこの行事に欠かせないのが、体を温めるためのホットワインである「Vin brulè(ヴィン・ブリュレ)」やチョコラータ・カルダ。広場の角でもこれらが振舞われる。

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そして、人々が薪の周囲に集まり始め、周囲が暗くなってくるとそろそろと点火の準備も進む。

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大きな火となるため、消防車が何台も待機。時間になって薪に火がつけられると、あっという間にメラメラと燃えていく。一瞬でベファーナの姿も見えなくなって、なんだか可哀想…。

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帰りに近くのバールで温かいカフェを飲んで暖をとり、家路についた。

街の中心に置かれる大きなクリスマスツリーもこの日でお別れ。明日には撤去作業となる。

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今年も1年、よい年でありますように!




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