パドヴァのとっておき。

北イタリア・ヴェネト州パドヴァより、料理や季節のおいしい情報を中心に、日々のできごとを綴ります。



チーズ熟成士 Antonio Carpenedo :: 2012/08/29(Wed)

トレヴィーゾ県北部、ポヴェリアーノPoveglianoという町にあるチーズ製造者、カゼアリア・カルペネードCasearia Carpenedo。

R0031555_convert_20120828162227.jpg

チーズ製造者としては1976年から。アントニオさんが創業者だが、彼のお父さんのエルネストさんが所有していた900年代初期の食料品店がその始まり。地元のチーズはもとより、ハム類他日常の食料品店に生まれ育った氏がチーズに特化してチーズ製造業を始めた。

R0031541_convert_20120828161958.jpg

現在は彼のご子息であり、父上と同名のエルネストさんとアレッサンドロさんが実際の経営及び製造を担当しており、アントニオさん本人はそれを傍で見守っている。(実際のところはいつまでも完全には引退できずにいるだろうが)

ここの目玉商品はワインを作ったあとに残るブドウの搾りかすでチーズを覆って香りをつけたウブリアーコという種のチーズ。ウブリアーコとは“酔っ払った”という意味だが、まさにブドウで酔っ払ったようにチーズの表面の色もそして香りもワインを髣髴とさせる深い香りが特徴。

R0031550_convert_20120828162137.jpg

トレヴィーゾ周辺のピアーヴェ川周辺は戦時中、オーストリア軍の潜入が激しかった地区。チーズは嗜好品(貴重、贅沢品)として、また彼らの食糧として兵士により取り上げられるという危機に。

たまたまワイン製造の始まるブドウの収穫期で農家の庭先にはブドウの皮の山。チーズはできたてまたは熟成中のものをとりあえずはその中に隠し、しばらくしてから出してみたら、チーズの状態が変わっていた。その表面の色、味、熟成具合も通常とはまるで違い、それまでに通常に作っていたチーズとはまた別の代物が…という偶然から成る秘話から生まれたチーズとされている。

1976年にこのチーズを製造することを決め、チーズ製造所として現在の歴史が始まる。このウブリアーコL'Ubriacoという名のチーズは商標登録も取得し、彼ら独自の製法として、広まっている。たいていのチーズまたは各種生産者に言わせると、こういうものはどこの農家でのやってたよ~、という話になるが、初めに名前をとった人のみが得られる権限。

ちなみに現在はチーズそのものを製造しているのではなく、その製法に対する商標登録であり、同社でもウブリアーコとして商品としているチーズには牛、ヒツジ、またはそれらのミックス、漬けるブドウも品種がいくつかあり、それぞれの風味などの最も適したもので15-20種のウブリアーコを所有している。

ここはカンティーナの一部。まるでワインのカンティーナのようだが、同社のチーズを象徴しているかのようなエントランス。

R0031542_convert_20120828162023.jpg

R0031544_convert_20120828162047.jpg

ここに保管してあるチーズは、トレヴィーゾを中心にヴェネト北部のものが主なもの。少しだけ他州のものもあるのだとか。

R0031546_convert_20120828162112.jpg

R0031551_convert_20120828162201.jpg

と、まあウブリアーコとして有名な同社だが、創業者のアントニオさんはそれはそれはファンタジックな人物で、チーズに対して自らのいろいろな思いを馳せ、それを実際の商品に仕上げている。

それの代表的なのがヴェント・デスターテVento d'Estate。チーズにこういう名前をつけるのも珍しいが、これは干し草とくるみの葉でチーズを覆い、さらにはワインの製造者より使い終わった熟成樽を譲り受けてその中でチーズを熟成させるというもの。

ヴェント・デエスターテとは、夏の風、という意味。アントニオさんと奥様のジュセッピーナさん、いや、ピーナさん…本人は”ピーナ”だけで呼んで~!と言われるので…が夏のヴァカンツァにモンテ・グラッパ(グラッパ山)へ出かけた際、前(だったか後ろだったか…)に牛の餌にする干し草を積んだトラクターが走っていた。

その干し草の香りが風にのって漂ってきて、何かチーズとコラボレーションできないかな?!と直感が働く。即座にその干し草を分けてもらって持ち帰り、検討の末、前述のような熟成をとってできあがったというもの。1997年の作品(あえて作品と呼ばせていただく)。樽の中で3-4か月熟成させることで出来上がる。

イタリア国内のチーズ品評会でもいくつもの賞を獲得している同社のチーズは、こうしてアントニオ氏のファンタジーアが存分につぎ込まれているもの。

R0031559_convert_20120828162256.jpg

自分のチーズ哲学の一部を話すアントニオ氏の傍らで、終始温かな眼差しを注ぐピーナさんにはまさしく深い愛情を感じたが、彼曰く、チーズ作りはアモーレ(愛)のストーリーだ、と語り始めていた。いいものを作り出す、造り出すには、やはりそれにかける情熱とそして愛が必要だ、ということでこの日の訪問はなんとなくうまく話がまとまったよう。

R0031563_convert_20120828162323.jpg

La Casearia Carpenedo s.r.l
Via Santandrà 17, Camalò di Povegliano, Treviso
Telò 0422.872178
関連記事


テーマ:イタリア - ジャンル:海外情報

  1. Produttore/生産者
  2. | trackback:0
  3. | comment:0
<<カンティーナ・ジェレット | top | いちじくのクロスタータ>>


comment

comment


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://violamasako.blog83.fc2.com/tb.php/605-edfd719b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)