パドヴァのとっておき。

北イタリア・ヴェネト州パドヴァより、料理や季節のおいしい情報を中心に、日々のできごとを綴ります。



モンタニャーナのプロシュット Daniolo Vittorio :: 2012/10/09(Tue)

パドヴァから南西に50㎞ほど、モンタニャーナという町がある。城壁に囲まれた中世の特徴的なヴェネトの町を象徴するような町。街をぐるりと囲む城壁が、ヴェネトのなかでも最も大きく保存状態もよいのがこのモンタニャーナだと言われている。

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ここはパダーナ平原からベリチ丘陵地帯Colli Bericiとエウガーネイ丘陵地帯Colli Euganeiの麓に位置する土地柄。自然が生み出す気候が良質の肉製品をつくるのに適した土地として、ここで作られるプロシュット、プロシュット ヴェネト・ベリコ・エウガネオProsciutto Veneto Berco Euganeo(通称プロシュット・ヴェネト)は1996年に原産地及び生産地などを保護・指定されるために漬けられる呼称であるD.O.P(Denominazione di Origine Protetta)に指定されている。

1971年に設立されたこの土地のプロシュット協会の副会長を務める、モンタニャーナのハムの生産者の一人であるダニオーロ氏を訪問した。

左側がダニオーロ・ヴィットーリオ氏、右側が息子さんであるエンリコ氏。

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現在、協会には10製造所が加盟。そのうちのダニオーロを含む3業者がモンタニャーナにいる。パルマやサン・ダニエーレほど広く知られているハムではないのは、協会の力不足との懸念もあるのは事実。

しかしながら、土地から生まれる産物は素晴らしいもの。モンタニャーナのハムの特徴はぎりぎりの塩加減で最適な熟成工程を踏むことによる、肉質の柔らかさ、ハムの旨み、甘みが最高なものに仕上がる。ハム一本を脂の部分も残すことなく食べられる良質な仕上がりなのだ。

協会組織も小さめだが、生産現場も地元本来のものは比較的小規模。小規模ならではの良さはやはりすべてが人の手によるところによる。長年の感覚と感性で作り上げるのだから、できあがるものは最高級。しかし、同時に人の感覚に任せているため失敗のリスクも大きいという。熟成期間13か月のときにD.O.Pの焼印を押すことで製品の価値が保障されるのだが、この際の検査で保障を取り消される場合ももちろんあるからだ。

検査は同時期に製造に入ったハムのなかから抜き打ちで一本持ち帰られ、そこで品質に関しての検査を受ける。この一本で製品の価値が決まるのだが、これが大変にシビアな結果に終わることももちろんあるからだ。

これがその検査に合格して初めてPROSCIUTTO VENETOの焼印を押されたもの。ここで初めてD.O.Pのハムとしての価値がつくことになる。

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プロシュットの製造過程は非常にシンプル。それもそのはず、季節と土地が作り出す自然が、肉の保存品として作り上げてきたことを再現することなのだから。

第1段階は塩漬け。海の粗塩を肉の表面にしっかりとまぶして数日間置く。気温は4℃。途中塩漬けのまま表面をマッサージ、そして上から圧力をかけて肉を押し、中の血を抜きだすのを助けてやる。この塩漬けの段階で最終の仕上がりの味がほぼ決まるらしい。

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原料となる肉も非常に重要なことはいうまでもない。モンタニャーナ周辺からマントヴァ、ブレーシャ近郊までのパダーナ平原で飼育されている豚を使用。トレーサビリティ管理のされた肉は、全て豚の成育状況が明確であることは最低限の条件だ。

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プロシュットの製造に入る前にも、ここで原料に対しての証明がつけられている。

塩漬けされた肉は1週間から10日間後、その後まわりの塩を取り除き吊るしてさらに数日おく。

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そして第2段階。保存の部屋を変えて、肉を乾燥させながらの熟成期間に入る。部屋の温度はやはり4-5℃。ただし前段階と違うのは、部屋の中の大気を循環させていること。肉の表面を乾燥させながらも湿度を保つ。乾燥しすぎてもいけないし、水分を保ちすぎてもいけない。
ここで3か月間を過ごす。

その後、お湯で肉を洗う。塩や抜けてくる血などの汚れを洗い流す作業。

その過程を過ぎると、腿の付け根、切り口になっている部分に蓋をする。これはストッコと呼ばれるもの。従来は豚の脂と小麦粉を練ったものを使用していたが、近年は製造過程に小麦粉を使用する製品にはその表示が必要なことなどもあり、米粉を使用している。

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水分が必要以上にぬけるのを防ぐためにも非常に大切なアイテムだといえる。

そして最後の熟成へ。
前述の通り、13か月でプロシュット・ヴェネトとして承認された証をつけ、15-16か月くらいのものから商品として出荷されることとなる。

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この熟成期間中、何度か肉の質をコントロールする必要があるのだが、これに使用する道具が馬のスネ骨の先端を細く尖らせたもの。これをスティンコの上からほぼ決まったポイントにぐっとさしてすぐに鼻に近づけて香りを嗅ぐ。刺した部分の穴は必ずに塞ぐことも鉄則。

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この串状の馬骨はプロシュット製造には欠かせない道具のひとつ。香りが即座に付着し、そしてすぐに消失する、という非常に大切な要素を持ち合わせる唯一の素材がこの部位の馬の骨なのだ。

同生産場の2代目でありハム作り50年というVittorio氏。ハムにかける情熱がひしひしと伝わってくる。忙しい合間にほんの少しお邪魔します、というはずが、説明が途切れることなく後から後から続き…。

ひと通りの工程を廻った後、ここで作られたハムをいただいた。薄いピンク色に発色したプロシュット。旨みと甘み、塩味が絶妙。奥さん、息子さん、お譲さんもここで登場。

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家族で伝統を守る姿、やはりやはりここでも。職人仕事であるがゆえに小規模ではあるものの、品質の良さは保障つき。生産者の顔を見ると、街場でハムを買う際にも彼らの顔を思い出し、同社の製品を選んで買いたくなる。

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Salumificio e Prosciuttificio
Daniolo Vittorio
Via Campana 14/B Montagnana (Padova)
Tel; 0429.81512



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テーマ:イタリア - ジャンル:海外情報

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