毎年恒例のバッカラのお祭りが、ヴィツェンツァ県のサンドリーゴという町で今年も開催された。

バッカラはヴェネトを代表する素材として、いくつかの代表的な料理がヴェネト州内各地に存在する。そのなかでも、ヴィツェンツァのそれは、『バッカラのヴィツェンツァ風=Baccalà alla Vicentina(バッカラ・ヴィツェンティーナ)』として、土地の人たちに愛されながらも、ヴィツェンツァ料理としてだけではなく、ヴェネツィア料理として、そしてヴェネトを超えても全国的に知名度のある皿となって現在も息づいているものだ。
これが、ザ・バッカラ・ヴィツェンティーナ!!

乾燥した硬いバッカラを3日間かけて水で戻し、タマネギ、アンチョビ、グラーナなどを加えて牛乳とオイルで煮込む。
添えてあるのは、ヴィツェンツァの美味しいポレンタ、マラーノ産のもの。色が少し浅くて、甘い味わいのある旨いポレンタ。

ヴェネツィア料理として…というのも、ヴィツェンツァは、他のヴェネト州内の土地及びその隣接する土地と同様、16世紀以降、18世紀にナポレオン率いるフランス軍による進撃までは強大健固なヴェネツィア共和国であったため、ヴィツェンツァ料理=ヴェネツィア料理としてその存在が認められているものだから。とはいうものの、土地の人たちは勿論、それぞれの土地を独自のものとして認識しているので、同一とは決して思ってはいないけれど。
バッカラの歴史はこのヴェネツィア共和国時代に遡り、ヴェネツィアの商人が15世紀前半にクレタ島を出発した食糧調達の船が現ヨーロッパ北西部へと進行中に悪天候による遭難の際に幸か不幸か漂着した島にて見つけたものが、このバッカラ。つまり保存食としてガチガチに乾燥したメルルーサだった。
この島が現在、バッカラの主生産地であるノルウェーのロフォテン ( Lofoten)島、ロースト( Røst)島だ。ここでは、おそらく当時、唯一に近いたんぱく源である大型のメルルーサを内蔵を除いてそのまま乾燥させたり、塩漬けにした後に乾燥させたり、と、その当時で出来得る技術と手法を用いて食糧としていた。
ちなみに、この2種のメルルーサの加工法(塩漬けにしないで乾燥するか、塩漬けにしてから乾燥させるか)により、前者をストッカフィッソ=Stoccafisso、後者をいわゆるバッカラ=Baccalàと呼んで区別している。
特に前者のストッカフィッソは、乾燥した状態がのこぎりを使わなければ切れないほどに硬い状態にて、おのずと保存性抜群、おまけにカサが1/4以下になるほど小さくなる。つまりは、輸送には最高条件が備わっていたのだ。
そして、ヴェネツィアの商人がめでたくヴェネツィア帰還時に船の新たな荷として積んだことにより、現在、ヴェネツィアにてバッカラが土地独自の料理素材として根付くもととなったのである。ストッカフィッソとバッカラと、両者にて混同しやすいのだが、ヴェネトで“バッカラ”と呼ばれるものは、ほぼ完全に“ストッカフィッソ”であることは忘れてはならない大切なこと。とは言うものの、多くの人が総称して“バッカラ”と呼んでいる。(ややこしい…)
で、なぜヴィツェンツァにおいてバッカラが料理名となるほどに有名になったのか、ということは、おそらく、その当時、同地はヴェネツィアとはいえ、海なし県のヴィツェンツァであること、新鮮な魚の入手が困難な土地柄にて、この魚が大変重宝された、というのは想像に易いところである。さらに、なぜ、ヴィツェンツァ郊外のここ、サンドリーゴがバッカラで有名なのか、ということは…うーん、解らない…。
とはいえ、サンドリーゴといえば、この地に住む人はもちろん、全国的(??)にもバッカラの街として有名な土地。それゆえ、一年に一度のこのサグラは街をあげての大イベントとなる。
そうそう、ちなみのちなみに、サンドリーゴではバッカラは「Bacala」とされ、イタリア語の「Baccalà」とは表示を別とする。違い、解りますか?「C」がひとつ少ないのが、サンドリーゴ風。
さて、サグラで賑わう街は、イタリアとノルウェーの国旗で全体が装飾され、料理の素材が2都市の友好関係を結んでいる鎹であることが一目瞭然。この日はお天気のよい日曜日ということもあり、穏やか~な雰囲気が街全体を包んでいた。



この日はサグラのテントではバッカラは食べずに、街の老舗店でいただいたのだが、ここはお昼すぎに覗いたテント内。お昼時は人で溢れ返った場所。

バッカラを売る地元のおじさん。この期間中、よく売れて、ここにある最後の数本のバッカラを残すのみ、だとか。

期間限定、バッカラのジェラート!
ミルク味のジェラートに、バッカラが混ぜ込んである。確かにバッカラの食感…

こちら、街の老舗店は、もちろん店の看板メニューはバッカラ料理。店先には存在感たっぷりに大きなバッカラ像。干からびた感がちょうどよい感じ…

街中のもう一方のこちらの老舗店も、この日は予約満席にて、2つの国の旗が大きく店先に掲げられている。


ヨーロッパの2つの街を強く結びつけている。
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