パドヴァのとっておき。

北イタリア・ヴェネト州パドヴァより、料理や季節のおいしい情報を中心に、日々のできごとを綴ります。



ヴェネツィアの金箔師「バッティ・オーロ」 Mario Berta Batti il Oro :: 2015/12/21(Mon)

ヴェネツィア話が続きますが…

かつて栄華を築いてきたヴェネツィア共和国の文化には、調度品や装飾品に使われる金の技術師も多く存在したといわれている。

最も顕著な例としては、現在のヴェネツィアのシンボルでもある、サンマルコ寺院にふんだんに使われる金モザイクの素材として、ヴェネツィアの重要な産業のひとつでもあるムラーノのガラスにも金を使用した食器類や装飾品等、そして、家の繁栄を象徴させるものとして煌びやかに家を飾る調度品等、あらゆるところに使われる金は、まさしく豊かさの象徴でもある。

年代を過ぎるごとにそれらは、かつての持ち主の手から離れ、そしてそれらの製作に関わる人材も、明らかに減少・衰退する。
現在、その技術を持ち合わせる職人は貴重ではあるが、後継者不足などの深刻な問題にとらわれがち。非常に残念なこと。

ヴェネツィアにて、金箔は非常にもてはやされた時代があり、その時代には、何百という人数の職人がいた、ともいわれているが、現在ヴェネツィアに残る金箔職人の工房は、たったの一軒となってしまっている。

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その貴重な一軒であり、金箔師としてヴェネツィアに残る唯一の人物が、このマリオ・ベルタさん。
マリオさんの家は1926年に、金箔の工房として現在の形となっているが、職人としては、数世代に渡るヴェネツィアの家系。

現在の工房を訪れると、小さな部屋でマリオさんの奥様と親族とで作業を続けている。今のところ跡取りとなる男性がいない、というのが悩みの種らしい。

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この部屋では、のばした金箔を正方形に切り抜いて、一枚一枚丁寧に紙の間に挟んでいる作業が行われている。
この作業は女性の手にかけられた細かい作業だ。ピンセットでのばした金を専用の型を使って手早く整形する。

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部屋は床の上にすのこがひかれ、その下には大きな紙が敷かれている。定期的にこの紙に落ちた金も拾いあげ、他切れ端となった金などを集め、再度溶かして使用するため。

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この部屋で作業された金箔は、束にされていよいよたたく(バットゥータ)作業へ。

ここからは男性の仕事。何種類もある重い金槌で上から何度もたたいていくことにより、少しずつ薄く薄くのばされる。重さを変えながら徐々にのばしていくのだ。
この金箔は、1万分の1㎜、数ミクロンという薄さまでに、それも均一にのばされるまで、根気強く繰り返される。

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しかし、この金槌の重いこと…私などは一番小さいものでも片手で持つのがやっとなくらいだが、これをマリオさんは日に何度も繰り返す。

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後継者となる男性の存在が望まれるのは、尤もなこと。

寒い冬でも長袖など必要のない、体力勝負な現場。金を扱う現場だけあり、湿度もあり蒸し暑い。

ここでは、金を溶解するかまどや、それをある程度の薄さにまでプレスする機械なども使用されるが、これらの機械がこれまた時代を感じさせるものだ。

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毎日毎日、こつこつと続けられる作業から生まれるこれらの金箔の使用用途は芸術品から消耗品まで様々。

ムラーノのガラス作品に使われるものももちろん、現在はお化粧品や美顔クリームの素材として、また料理やお菓子のデコレーションなどにも使われる。

彼らのミッションはとは「伝統の素材から新たな使用法とその可能性を探求し続ける」というもの。古いものを伝統に沿ったもののみではなく、現代に求められる形に変容、変調させていこう、という姿勢が感じられるもの。

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この工房の場所はマリオさんのお父様の時代に購入したものなのだそうだが、ここは、ヴェネツィア派の代表的画家でもある、ティツィアーノ・ヴェッチェッロの住んでいた家でもあるそうだ。

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ヴェネツィアのひっそりとした小路にひっそりと佇むこの家、そして工房。工房の看板も特に掲げられているわけでもなく、呼び鈴のみが場所確認の手だて。

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