昨今のイタリア・ピッツァ事情は動きが非常にあって、注目分野でもある。ピッツァはローマ式?それともナポリ式?という、好みの2分化に合わせて少々異なる視点で新たなピッツァ分野を広げているものが、通称「ピッツァ・タリオ(切り売りピッツァ)」と呼ばれるピッツァ。
文字の通り、店頭で切り売りするピッツァなのだが、ひと昔前(もちろん現在もその多くだが)の安い立ち食いピッツァというイメージからかけ離れるもの。
私の住むヴェネトには、その分野のピッツァにおいて、非常に著名な料理人(あえて、ピッツァ職人とは呼ばない)が点在している。そこでは素材や原料、発酵、そしてそれを食する空間を提案し、人気を博し、今やあちらこちらの取材やイベントなどでもひっぱりだこ。
そんな分野のなかに君臨する一店が、ここ、ローマのガブリエレ・ボンチ(Gabriele Bonci)の『Pizzarium(ピッツァリウム)』。

店は着席する場所はない。店頭に並ぶピッツァを注文し、紙製の皿に乗せられたそれを、店頭のテーブルで立ち食い、または持ち帰るシステム。
彼のこだわりとは、ピッツァはピッツァにして、ピッツァではならず。ピッツァを単なるピッツァとして見ずに、ひとつの料理とみなす。

だから、使う粉、酵母、そしてトッピング要素に関するすべての材料は、生産者の顔を知っているもの。ナチュラルさを売り物にした、切り売りピッツァなのだ。
その日のメニューは店内の黒板に。

試してみたのは、フリッジテッラをトッピングしたもので、トマトソースなしにて、生地の旨さがよく解る。

しっかりとして噛み応えありながらも、中はもっちりとして発酵がうまく進んでいる生地は、粉の風味もいきている。表面はしっかりと」したクロッカンテ。ピッツァというより、フォカッチャという感もある。お腹いっぱいの時に行ってしまって、ソースの乗ったタイプを食べなかったのが、大後悔ではあるけれど…
店内は、使用している粉の販売や、ピッツァにつきもののビールなどもある。ビールはもちろん、小さな生産者のこだわりのクラフトビールが数種並ぶ。


彼の著書も、もちろん。

ひとつの観光名所にもなってしまうほどの、人気店。時間によっては、店前にいっぱいの人だかりになることもある。
そんなこともあり、ガラスケースに並ぶピッツァの回転もよく、いつも焼きたての新鮮で美味しいものが食べられるのは、人気店ならではの利点ともなる。

ピッツァとしては決して手頃な価格帯ではないものだが、一度足を運ぶべし、ピッツァ店。

PIZZARIUM
Via Tronfale, 30 Rpma
06.39.731454
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ミラノに住む友人夫妻がヴェネトでの所用の際にパドヴァに立ち寄ってくれ、夏の夜を共にした。普段から何かとお世話になっている友とそのご主人。再会を楽しみにして選んだ店がここ、パドヴァの丘陵地帯、エウガーネイ丘陵地区にある丘の上のレストラン「リストランテ・アッラ・ヴィーニャ(Ristorante Alla Vigna)」。

パドヴァ郊外には、いわゆる、アグリトゥーロズモ的な郊外型の素敵なレストランが結構たくさんある。週末や、美味しいものを食べたいときなど、街中に出かけていくよりも車で少しだけ外に出るだけで、穏やかな風景のなかでゆったりとした時間が過ごせる場所がある。
そして、パドヴァの南側に位置する、ローマ時代からのテルメ(温泉保養地)であるアーバノ、モンテグロットからは至近距離。
この日もそんな店のうちの一軒へ。
日中は猛暑ともいえる日、日の暮れ始める夜8時頃を目安に出かけていくと、そこは数度は平野よりも温度が低いのだろう。カラリとした湿気のない日だったため、ひんやりとした夜風がとても心地良し。

この一帯はワインの産地でもある。高台にある店からは、広がるぶどう畑とさらに向こう側に見える街の様子がとても美しい。

この季節はやはりテラス席がいいよね、ということで、店前に設置されたテーブルを選び、メニュー選び。街中と違い、この店の雰囲気にしてはヒジョーにお得感満載な料理の価格と、そしてもちろん地元料理が並んでいることもあり、期待が高まり…

選んだものは、ヴェネトの家庭料理、豚のミルク煮。でもとっても繊細に仕上げてある。

他、ホロホロ鶏の詰め物をしたローストやら(絵柄的には極似だけど)、バッカラのヴィツェンツァ風煮込み。などなど…

これらのセコンドに、たっぷりの野菜のコントルノをつけてもらい、地元のメルローを頼んで、ちょうどよい腹具合で終了。
美味しい料理を素敵な人たちとともにテーブルを囲むささいなひと時。これも真夏の夜の思い出の一コマだ。
Ristorante Alla Vigna
Via Vallorto, 23 -35038 Torreglia Padova -
Tel. 049.5211113
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バッカラ(baccalà)は、ヴェネトを代表する食べ物で、ヴェネト州内にも、各地域により様々な郷土料理が存在する。
バッカラとは、大型のタラ(メルルーサ)を干したもの。本当は、魚を三枚におろしてから塩漬けにしたものをさすのだが、ヴェネトでは、一般的にバッカラと呼ばれるそれは、魚の内臓をとり、ガッチガッチになるまで干したもの。ノコギリを使わないと切れないくらいの硬さになる。これは、正しくはストッカフィッソと呼ばれるもの。
もちろん、レシピ本には、本来のバッカラと区別するためにストッカフィッソと表示されるのだが、一般的にここら辺では、バッカラ=ストッカフィッソとして認識される場合が多い。
その、バッカラ(あえて、バッカラと呼ぶ)の最も有名な料理としては、主にヴェネツィアが主流の『バッカラ・マンテカート』、ヴィツェンツァで主流の『バッカラ・アッラ・ヴィツェンティーナ』が挙げられる。
前者は、戻して茹でたバッカラをほぐして、そこにオイルを少しづつ加えながら激しく攪拌することにより、ペーストのような仕上がりにしていくこと。タラの繊維質の多い肉質の特性を生かしたもの。
後者は、戻したバッカラを牛乳、オイル、玉ねぎ、アンチョビ(入れない場合もある)、パルミジャーノを重ねて鍋に入れ、それを数時間かけて煮込むもの。
この料理は、『アッラ・ヴィツェンティーナ(ヴィツェンツァ風)』と呼ばれる通り、ヴィツェンツァ周辺が発祥の料理だが、ヴィツェンツァ近郊のサンドリーゴという町は特に同料理に関しては特別な土地として、この料理の”お墨付き”のついた特定レストランの協会までもが発足する。
このマークが目印。

サンドリーゴ周辺には、土地の有名店が、イコールバッカラ専門店となり得る傾向になるほどだ。いかに、この土地の名を冠したこの料理が地元密着度の非常に濃い一皿だ、ということが解る。つまりは、それだけ、地元の人に愛され、大切にされているもの、ということだ。
前置きが非常に長くなったが、パドヴァ郊外で、ここでも100年以上の歴史を誇る、バッカラの専門店がある。
パドヴァ郊外の町、ヴィツェンツァ方向にあるサッコロンゴという町のレストラン、リストランテ・ヴァッチェーゼ(Ristorante Vaccese)。

今年、105年を迎える、家族経営のこじんまりしたレストラン。素朴な造りに店内もクラッシックな雰囲気だが、地元人に愛され続ける店。
ご主人のレンツォさん。

この日に私たちが注文したものは、バッカラのビーゴリ。

バッカラ3種盛り。内容は、バッカラ・マンテカート、バッカラのインサラータ(茹でたバッカラをオイルと塩、コショウで和えたもの)、そして、バッカラ・マンテカート。

これらのメニューは、ヴェネトにいると、非常に頻度高く食べる機会のあるもので、目新しさはそれほどないのだが、これを目当てに通う馴染みが多くいる。
なんだかほんのりと温かいのは皿の上の料理だけではなく、店全体が、そしてこの空間に居る他のお客さん達全てに漂っているような気がした。
Ristorante Trattoria Vaccese
Via Roma 98, Saccolongo 35030, Padova
info@trattoriavaccese.it
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ここは、パドヴァの…いや、カトリックの聖地でもある、サンタントニオ教会のすぐ近く。同教会から北側にまっすぐにのびる、いわゆる参道ともいえるであろう存在の小道であるダンテ通りに位置する店、『トラットリア・デイ・パッカネッラ』。
周囲は教会関連のグッズなどを売る店が並び、細い石畳の両脇にはポルティコ(柱廊)が続く、非常に風情のある通りだ。並ぶ店も、長くここの地にあるものばかりでアンティークな雰囲気たっぷりである。

ここで90年ほど前から続く店が同店。創業当時からのオーナーではないが、現在の店主、チェーザレさんになってから、40年以上。
ここでいただく料理の数々は、これぞパドヴァ料理、もしくはヴェネト料理、というもので、クラッシックな料理ではあるが、地元の人たちにも人気のある店だ。その客層も若年層ではなくて、ある程度の年齢のいったご婦人、地元の家族などなどで構成されているところをみると、この店の位置付けも見えるような気がする。客によって店の雰囲気も構成されるものであるから。
さて、ここでいただきたい一皿は、アンティパストには、パドヴァの産物であるガッリーナ・パドヴァーナ(パドヴァ鶏)を使ったインサラータ。

ガッリーナは数年をかけて飼育されるため、若鶏と比べ、肉質がとてもしっかりとしている。インサラータとしては、茹でたものを裂いて使用されるのだが、茹でもしっかりと時間をかける必要がある。
伝統的レシピだと、甘酸っぱいアグロドルチェに仕上げる料理で、干しブドウやカンディーティといわれる柑橘の砂糖漬けなどを使う。そこに生のサラダ野菜や茹でたインゲンなどが添えられるもの。
同店では、そこに、赤タマネギの甘酸っぱいマリネを使用して、全体をアグロドルチェにまとめている。アンティパストとはいえ、これ一皿でも結構に食べこたえのある一皿。
そしてこちらは、ヴェネトにいたら必須の皿。バッカラ・マンテカート。これもお決まりでポレンタを添えて。

プリモには、これもはずすことのできない、ヴェネトのパスタ料理。ビーゴリ。太いスパゲティ状の麺は、伝統的には押し出されてできるパスタ。
通常は、カモのラグーまたはイン・サルサといって、アンチョビとタマネギとでつくるソースを合わせるのが王道。太い麺であるので、比較的しっかりとしたソースとの相性がよい。
この店では、ガッリーナ・パドヴァーナの肉をラグーにして。滋味深いラグーにビーゴリとの相性は抜群によい。

この日は、チェーザレさんの計らいにて、白トリュフのタリアテッレを一口だけいただいた。


そして、この日に選んだセコンドは、うさぎの煮込みとカモのロースト。


料理はクラッシックだが、いつも変わらないその伝統を守る、パドヴァの正統派レストランだ。

Antica Trattoria dei Paccagnella
Via del Santo 113, Padova
tel: 049.875.0549
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トレヴィーゾ県の北の端、ソリゲット(Solighetto)という町にある心地よい食事処。ここはプロセッコの産地でもある、丘陵地帯の中腹の静かな場所。
地元の人が一番にお勧めするのが、同店、『アンティーカ・オステリア・ディ・ヴィア・ブランドーニ(Antica Osteria Via brandolini』。その店名は、店のある通り(ヴィア)の名からきていて、趣のある看板が目印。

中に入ると、落ち着いていながらクラッシックな雰囲気のする店内。ムラーノの美しい鮮やかな色のガラスが整然と置かれていて、背筋がぴしっとしながらも、美味しいものを食べさせてくれそうな、いい予感のするエントランス部分。



実は数年前にもこの地に仕事で訪れた際に連れていってもらって、いい店だなぁ~と思ってたところ、また偶然に女友達3人で訪れた。それも、地元のワイナリーの方に推薦してもらって、来てみたらここだった、という。嬉しい偶然だった。前回は記憶もたどたどしかったけれど(というか、昼食場所を覚える余裕もなかった…)、今回こそは、覚えたぞ!!
メニューはほぼ店のお任せ。アンティパストには季節の野菜のたーっぷりな盛り合わせが運ばれてくる。彩りよく、野菜の美味しさを味わえる。
普段、野菜料理というと、形なく、くったくたに皿の上にゴソッとのっけられてくる、という場面が多いが(それはそれで美味しい。野菜の種類によってはそっちのほうが美味しいのだけれど)、ここのは、とってもシンプルに、そしてあっさり。カボチャなんてスライスして茹でただけで出されてきたりする。地元、アーゾロのオイルを少しかけていただく。素材の旨みに、「御馳走様」と言いたくなる。

そして、地元のサラミやハムの皿が。各自好きな分だけを取り分けるスタイルだ。豆の煮たのや、米のサラダやら、今の季節のヴェネトには欠かせない、ラディツキオなど…


盛り合わせると、こんな感じ。

お次はその日のプリモ・ピアット。カボチャの詰め物をしたトルテッリやら、秋ならば、きのこを手打ちのタリアテッレに合わせて。


お腹の余裕があれば、ぜひ食べたい、この店の名物、スピエード。つまり、串に刺した肉のローストだが、ここは滋味あるウズラの肉で。

こんな感じに窯の火でじっくりと焼かれる。

(この写真は店のHPより)
ドルチェは毎日店で焼かれるトルタ類が客席の傍らに並ぶ。これも店の名物。食事していると、厨房から熱々のトルタができあがってきて、型のままそこで冷まされる。

とりたてて変わったドルチェがあるというわけでもないが、どれもこれも優しいマンマの味がする。

夕食に訪れていないので、夜の様子は解り兼ねるが、昼は感じのよい客層。スーツ姿の男性のグループはこの店の昼には欠かせない光景。店の雰囲気からもビジネスランチにぴったりな仕様。
個人的には、昼にこういうビジネスマンたちが食事をしている店って、非常に心地よい感じに食事のできる、という基準のひとつにもなっているところでもある。
美味しいプロセッコは必須のこの土地。時間や仕事や帰りの車の運転など気にせずに訪れたいなぁ…と想う店。
Antica Osteria di Via Brandolini
Via Brandolini, 35 - 31050 Solighetto (TV)
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